地球科学班(A02-1)

研究課題名:スパースモデリングに基づくデータ駆動解析による地球プロセスモデルの構築

研究代表者:駒井武(東北大学大学院環境科学研究科 教授)
研究分担者:岡本敦(東北大学大学院環境科学研究科 准教授)
研究分担者:桑谷立(海洋研究開発機構 研究員)
連携研究者:土屋範芳(東北大学大学院環境科学研究科 教授)

研究概要

地球科学分野で得られる高次元・大量の計測データの振る舞いは非常に複雑であり不確定性も大きい.したがって,高次元データから地学現象を真に理解するためには,現象を記述する本質的な説明変数を選択しデータに潜む比較的少数の物理化学支配プロセスや構造を抽出する必要がある.
 本計画研究では,スパースモデリングを地球科学分野に導入することで,高次元・大量の地球科学データに潜む本質的な物理化学プロセスや構造を抽出する普遍的な枠組みを構築する(右図).

本研究の背景と着想に至る経緯

地球科学は,こつこつとデータを取得し,その結果をもとにある種の"ひらめき"や天才の出現により新たなパラダイムが構築されてきた.本提案はこれらの地球科学の歩みに一石を投じ,データ駆動のモデルを提案し,隠れた地球プロセスモデルを見いだす情報処理技術の開発を目的としている.すなわち恣意性の無い客観的データ処理であり,それを通じて未知の地球プロセスを系統的に導ける情報処理技術の構築を目指す.
 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う大津波は東北地方沿岸各地に甚大な被害をもたらした.今回及び過去に起きた津波の実態やメカニズム,環境に及ぼす影響などを明らかにすることは,地球科学の面した喫緊の最重要課題である.我々は震災前・直後から津波被災地全体をカバーする綿密な地質学的調査を実施し,採取した津波堆積物について詳細な化学分析を行っている.現在までに,スパースモデリング班(B01-2)との共同研究により,判別に最も効果的な元素を自動選択し高精度な津波堆積物の判別を可能にする手法を開発した.これは,計算機の活用により高次元データから適切な少数の説明変数を自動抽出することで,地球科学者の推理だけでは導き出せなかった本質的な現象を発見できることを示唆する.

本計画研究の目的

スパースモデリングにより高次元・大量の地球科学データに潜む本質的な物理化学プロセスや構造を抽出する普遍的枠組みの構築を行う.具体的課題を以下に示す(下図).

【課題1】津波堆積物の地球化学判別の高精度化と歴史大津波堆積物への適用

堆積学データや各元素の比などの様々なデータセットを新たに導入し判別法を高精度化する.また,震災以降に各地で取得されているボーリングデータなどに適用し,歴史大津波到達範囲の特定に貢献する.

【課題2】津波堆積物の物理化学的挙動の解明と環境リスク評価

津波堆積物の化学的特徴や重金属元素の挙動メカニズムを明らかにすることで,環境汚染リスクの定量的な評価までシームレスに接続させる.

【課題3】地球化学データ解析法の固体地球科学への応用

上の二つの課題で開発した手法を固体地球科学分野にも適用することで,データ駆動解析により固体地球のプロセスモデルを構築する.